世界の痩せすぎモデル規制の経緯と日本

 4. 日本の現状
 
   このように、欧米各国では、摂食障害の発症を予防するために、痩せすぎモデルを規制する取り組みが進んでいますが、日本ではそのような取り組みは全く行われていません。では、日本に痩せすぎモデルは存在しないのでしょうか?
 日本の代表するファッションショーである東京コレクションを主催する日本ファッションウィーク推進機構は、新聞の取材に「日本のショーで問題があるほど痩せ過ぎのモデルはいない」と語っています。しかし、日本のファッション雑誌で活躍しているモデルの、公表されている身長、体重からBMIを計算すると、BMI14−16台が数多く存在します。欧米ではBMI18以下のモデルはファッションショーに出られないように規制されている状況にもかかわらず、日本では明らかに健康を害するレベルのBMI14-16という低体重のモデルが、メディアに好ましい美の基準の持ち主として取り上げられているのです。 
 摂食障害は、一度病気になると、慢性化しやすく、精神や身体の様々な面を蝕んでいきます。そして、摂食障害は精神障害の中で最も死亡率が高いだけでなく、最もメディアの影響を受ける疾患でもあります。しかし、その一方でメディア関係者の問題意識は薄く、医療者の問題意識もそれほど高くないのが現状です。摂食障害の予防のためには、このようなメディアからの影響への対処が必要不可欠です。
 こういった現状をふまえて、日本摂食障害学会は2016年に「痩せすぎモデル規制ワーキンググループ」を立ち上げ、この問題に取り組みを始めています。この摂食障害懇話会のメンバーもワーキンググループの一員としてその活動に取り組んでいます。