世界の痩せすぎモデル規制の経緯と日本

 3. 欧米各国の痩せすぎモデル規制
 
   痩せすぎモデルの死亡が相次ぎ、痩せすぎモデルの女性の心身に対する悪影響が明らかになり、欧米各国や業界団体は痩せすぎモデルの規制に乗り出しました。
 2006年、イタリア政府は、BMI18.5以下と16歳未満のモデルを規制し、スペイン政府はBMI18以下のファッションモデルのファッションショー出場の禁止措置をとりました。
 2007年、アメリカファッションデザイナー評議会(Council of Fashion Designers of America)は痩せ過ぎモデルに対するガイドラインを発表し、モデルは16歳以上とし、摂食障害に対する啓蒙と教育を業界に行い、摂食障害と診断されたモデルには専門治療を紹介し、専門医の許可なしでは、モデル業を再開させないことを決めました。
 2012年にイスラエルがBMI18.5以下のファッションモデルのファッションショーと広告への出演禁止と画像を修正した際はそれを明記することを法律として制定しました。
 2015年、デンマークで、業界団体と国立摂食障害協会がモデル業とファッションショーの参加ルールを作成しました。
 2015年、フランスで痩せすぎモデルを規制する法律が成立。ファッションモデルとして働くには、健康的な体型と体重であることを証明する医師の診断書を必要とし、デジタル修正された写真には必ず「修正済み」と明記することが義務付けられ、罰則規定も設けられました。
 2016年、ロンドン交通局が「非健康的な身体像」を載せた広告を規制すると発表し、痩せすぎた水着姿のモデルを使用した広告の掲載を中止。また、アメリカのカリフォルニア州議会でも痩せすぎモデルを規制する法案が審議中です。
 欧米各国で進められている痩せすぎモデルの規制は、主に2つの方法があります。
 1つは、国が主導となって規制を行うものです。政府が直接規制するパターンや法律を議会で制定して規制するパターンがあります。イタリア、スペイン、イスラエル、フランスはこれに当てはまります。
 もう一つは、業界団体がルールを作って自主的に規制を行うものです。しかし、アメリカの業界ガイドラインはあまり有効ではないようで、そのためにカリフォルニア州議会では法案の提出がなされました。一方、デンマークでは、業界団体と医療者が協力してルール作りを行っています。デンマークの服飾業界団体、モデルの労働組合、8つのモデル事務所、国立摂食障害協会(National Association of Eating Disorder and Self-harm)が共同で、デンマークファッション倫理憲章(Danish Fashion Ethical Charter)を制定し、その目的は「デンマークのモデルの安全と健康を保証し、摂食障害の増加を防ぐこと」と明記されています。モデルの年齢を16歳以上とし、年に一回の健康診断の受診、金銭報酬と2時間以上の仕事での健康的な食事提供が義務付けられています。現在、300以上の服飾メーカーやモデル事務所がこれにサインしており、コペンハーゲンのファッションショーに出る団体はこれを認証することが求められ、違反者はオンライン上のブラックリストに載せられ公開されます。