メディアからの影響は本当なのか

 2. 痩せ礼賛のメディアの影響についての研究
 
 実際に「痩せていることを理想とするようなメディアにさらされることが、女性のボディイメージを歪め、摂食障害をふやしてしまうのか」という疑問について、数多くの研究がなされています。研究にはさまざまな手法があり、研究毎に対象となっている人達にもばらつきがあるため、結果も様々です。1つの研究結果だけを取り上げて、結論付けることは望ましくありません。
 このような難しい疑問に対しては、同じような多くの研究結果をまとめて、より正確な結論を導くという方法(システマティックレビュー)が用いられます。この手法は科学的な因果関係を証明する方法としては、非常に信頼性が高いものです。メディアが女性のボディイメージに与える影響についても、このような手法で研究された論文があります。

 The role of the media in body image concerns among women: a meta-analysis of experimental and correlational studies. Grabe S, Ward LM, Hyde JS. Psychol Bull. 2008 May;134(3):460-76.

 この論文では、痩せていることを望ましいとするメディアと、それを見聞きした女性の「自分の体型への不満」「痩せの理想の内在化」「食行動への信念」という3つの要因への影響を、77本の論文を検証することで調べています。そして確かにメディアが、これら3つの要因に悪影響を与えていることが証明されています。
 検証された研究には大きく2つのグループに分けられました。1つ目は実験的に、痩せが望ましいとするようなメディアを見たあとに、自分の体型についてどう思うかといったようなアンケートに答えてもらうものです。やはり痩せすぎモデルをみた後は、自分の体型に不満を感じ、摂食障害の症状を示す尺度も悪化することが、いくつもの実験で示されていました。メディアの種類は、テレビコマーシャルでも、ファッション雑誌でも、ミュージックビデオでも同様でした。もちろんすべての研究がそのような結果となっているわけではなく、もっとほかの要因が影響するとしているとするもの、影響がない、もしくは逆の影響があるとしているものもありましたが、やはりよく計画された多くの研究で、痩せ礼賛のメディアへの暴露が、短期間での女性のボディイメージへ悪影響を与えることが示されました。
 もう1つの種類の研究は、実験ではなく普段どのくらい痩せを扱ったメディアに触れているかということと、体型への不満の度合いが関連しているかというものです。この種の研究においても、痩せすぎのファッション雑誌やテレビを見ている人が、より高いレベルで体型への不満や摂食障害の症状の程度が高いという関連があるということが示されました。
 1つめの実験による研究だけでは、メディア影響は一時的なものと言えるかもしれませんが、2つめの種類の研究と合わせることで、実際に痩せを望ましいとするメディアが女性の体型への不満などに影響を与えていていることがわかります。