メディアからの影響は本当なのか

 4. 新しいメディアの影響
 
 欧米ではこのような研究の結果が次々と明らかになってきたことから、痩せすぎモデルに対する批判が高まり、規制されるようになりました。そして実際に雑誌「プレイボーイ」のモデルについて調べた結果、1960年代、1970年代とモデルは痩せていっていましたが、それが1990年代には歯止めがかかるようになりました。一方で、2000年代後半になり、急速にフェイスブック(Facebook)やインスタグラム(Instagram)といったソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が拡大しました。SNSによって、人々は容易に友人の普段の様子を知ることができるようになり、外見や体型に関わるような写真などを目にする機会が増えました。それに伴い、SNSによる影響についても研究が行われるようになりました。
フェイスブックの利用とボディイメージについての研究は、複数行われています。フェイスブックで友人や有名人と自分を比較し、自分が劣っていると感じている人は、否定的なボディイメージをもつことや、フェイスブックを利用している人は利用していない人に比べてボディイメージに関する懸念が強いこと、自分の写真がSNSにより多くアップされている人は、体重への不満ややせ願望などが高まる結果が示されています。

Negative comparisons about one's appearance mediate the relationship between Facebook usage and body image concerns. Fardouly J, Vartanian LR. Body Image. 2015 Jan;12:82-8.

 さらに上述した研究のようにSNSとボディイメージに関する研究20本を取りまとめたシステマティックレビューでも、SNSに影響でボディイメージや食行動を歪んでしまうことが示されました。特に体型に関する写真を見たりアップしたり、またそれらに対する批判的なコメントを見ることが問題であるとされています。

A systematic review of the impact of the use of social networking sites on body image and disordered eating outcomes. Holland G, Tiggemann M.  Body Image. 2016 Jun;17:100-10.

 このように、痩せを礼賛するメディアが摂食障害を増加させ、女性の心身に悪影響を及ぼしていることは明らかです。SNSのような個人が発信するメディアを規制することはできませんが、少なくとも、その個人の理想に大きな影響を与えるマスメディアについては、国民の健康を守るために科学的な研究結果に基づいて妥当な範囲の規制を設けることが必要です。一度摂食障害になり、それが慢性化してしまうと、そこからの回復は決して簡単なものではありません。このような困難な病気になる要因を少しでも減らし、より豊かで穏やかな生活を送れる人が増えるよう、私たちは「痩せすぎモデル規制ワーキンググループ」の活動に取り組んでいきます。


 

  

資料等はすべて2017年10月現在のものです