正常体重でのダイエットの危険性

 1. 日本特有の若年女性痩せすぎ問題
 
  世界中で肥満の増加が問題になる中、日本では20歳代の多くの女性が痩せすぎで、その率が全く減らない状況が続いています。
 まずは、どのような場合に痩せすぎ、太りすぎというのか、その定義を説明しないといけません。今、世界的に最も使用されている指標はBody Mass Index (以下BMI)と言われるもので、体重(kg)/身長(m)2で計算されます(例えば身長160センチ、体重56キロでしたら、身長をメートルに直し1.6mとして、体重を身長で2回割ります。この場合、56÷1.6÷1.6となりますので21.9がBMIです)。
WHO(World Health Organization)1)でも、日本肥満学会のガイドライン2)でも、このBMIが痩せすぎの判定に使用されており、BMIが18.5〜24.9の間が正常で、BMIが18.5未満で痩せすぎとされています。

     図1 痩せすぎと太りすぎ

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 このBMIが18.5未満の痩せすぎの20歳代女性が、日本では増えています3, 4)。下の図2に示すように、1983年の痩せすぎは14.6%でしたが、1993年には17.1%、2003年には23.4%と激増しています。一方で、太りすぎは、この20年間で8%前後とほぼ変わっていません。

 図2 20歳代女性の痩せすぎ(BMI<18.5)と太りすぎ(BMI≧25)

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 これは世界的に見て、奇異な状況です。世界では1980年から2013年にかけて、女性の太りすぎ(BMI>25)が29.8%から38.0%となっています5)。
 図3の表は見えにくいですが、先進諸国(developed)と発展途上国(developing)の青年期(20歳未満)における太りすぎの割合を表したものです。先進諸国(developed)、発展途上国(developing)の青年期女性(20歳未満)で共に増加傾向が明らかです。1980年には先進諸国の青年期女性の16.2%が太りすぎており、2013年には22.6%に増加していますが、その増加傾向に歯止めがかかっています。一方、発展途上国の青年期女性では1980年から2013年にかけて8.4%から13.4%に太りすぎが増加し、今なお増え続ける傾向が認められます。このように世界全体を見渡した時に、問題なのは今なお増え続ける発展途上国の若年者の太りすぎですが、日本では痩せすぎの方が問題なのです。


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 図3 青年期の太りすぎの割合

 
 このような痩せすぎは、日本では1960年頃から始まりました6)。図4にありますように、1960年以降、日本の若年女性の身長は伸びましたが、体重はそのままであり、若年女性のBMIは低下してきたと言えます。日本で1953年に伊東絹子がミス・ユニバースで第3位に入賞し、「八頭身美人」が大変なブームとなりました。美人の基準が顔面至上主義からプロポーションを重視に変わったのです。そして、現在、頭が小さく手足が非常に長いアイドル達が登場するようになったのです。

BMI1960-90
    図4 日本における若年女性の年代別BMI